教室日記vol.13
前回(vol.12)からの続きです。
今回はパリオ祭について。
以前にも触れましたが、このシエナという街の人達は「セネーシ」と呼ばれ(ローマはロマーノ、ミラノはミラネーゼと言います)他の地方に比べて穏やかで大人しい気質の人々と称されてます。
しかし、年に二回のパリオ祭に関しては全くその呼び名と違い、本来かどうか知りませんが、本能的な血の騒ぐ激しい裸馬に乗るレースに掛ける意気込みは圧倒されます。
しかもその舞台はなんと街の中心部にある有名な観光地のカンポ広場なんです。(世界一美しい広場とも言われる場所です)
勿論、普段は石畳が美しく敷き詰められ、大凡こんなツルツルな所で馬が走ったら全馬転倒の大惨事になるため、そのレースの為だけにコースを作り、土を運び込んでキレイに均します。
それからコースの内側に観客用のスペースを設営するのです。
仕事の遅いイタリア人(申し訳ない!)がそんな事を短期間で出来るのか、不思議に思ってました。
ある日の朝、普段通り学校に通う際に朝食を取るバールに行き(かなりのイタリア人はここで朝ごはんを食べます。バールとはコンビニ兼食事処みたいな感じで公衆トイレが無い時にも便利です。)いつものパニーニとオレンジジュース(これが美味い!その場で絞ってくれます。)を頼み、食後にエスプレッソマシンで作るエスプレッソを飲んで、店のカッコいいお兄さんにチャオ!と言って学校に向かうのですが、そのあとが何かいつもと違います。
学校への道はカンポ広場の端っこを通るのですが、日本の工事現場みたいに歩行者用通路が作られて、そこを通る様に書いてあります!
なんだろう。何が始まるのか?と思いながら遅刻しない様に広場を抜けます。
学校が終わり、行きの道をまた帰ると今度は広場のそこらに土が盛られてます。
そしてたくさんの作業員みたいな人がトンボらしき物で土を広げたり作業を進めていて、ここが超有名観光地であることを忘れさせます。
後から聞くと広場に面している高級アパートがあり、この日の為に前々(一年以上とも)から予約で一杯になるそうです。
こりゃ、ここの住人でなくても興奮してただ事ではなくなるなあ。なんて感じです。
レース当日、前年には死んだ人もいると聞いたので、小心者の日本人は大人しく部屋でパリオのTV中継を見て雰囲気を味わう事に。
TVを見て、それが正解!と。
物凄い人達です。あの中にいたら華奢な日本人は多分押しつぶされることでしょう。おまけにレース前の余興でそれぞれの地区の大きな旗を持って行進する行者や馬を連れて観客に見せるパレードも押すな押すなの騒ぎです。
いざ!レースのスタート。
もう実況の声は聞こえません!観衆総立ちの大声がホントにいつも優しく穏やかで僕らにも笑顔を見せるシエナ人なのか?と思わせる程です。
祭りとはこんなにも人々を変えてしまう何かがあるんですね。
無事レースが終わり、見ている限りでは大事には至らなかった様です。
でもなんだかこちらも興奮してしまい、その場の雰囲気を感じたくなり、アパートを出て一目散に広場目掛けて走って行きます。
まだまだ沢山の人達が残っていて興奮冷めやらぬ状態で優勝した騎手を褒め称えています。
レースはTV、その後から現場。という、結果一番オイシイ(日本人的ですかね?)楽しみ方が出来ました。
こういうのは多分、団体旅行では無理だよな~。
とても非日常的な一日で、音楽とはひと味違うヨーロッパ文化に触れる機会でした。
様々な文化、風習そして何よりも人々の熱く貴重なものを見せてもらい、
きっとこれらは自分のこれからに通じる何かを得たような、手には触れられない思い出となりました。
次の日の朝、いつものバールに立ち寄り店の人に「行ってきまーす。」とした後、広場はいつも通りに戻ってました!! これにはびっくり仰天。
やれば出来るじゃん、イタリア人。
(続きますよ。)