教室日記vol.11

前回(vol.10)からの続きです。

シューマン、メンデルスゾーン共に素晴らしい曲ですが、めちゃくちゃ難しい!
シューマンの作品は亡くなった恩師曰く「雲をつかむ様な」メロディで、美しい音で紡ぐように弾かなければならないし時にはそのラインをトレモロ(ゴシゴシ弾くやつです)だったり、また時には最低音(C)をB♭に演奏しながら下げなくてはならないしその後間もなくまた元に戻さなければ、と。そしてメンデルスゾーンはこの曲(弦楽八重奏曲)を書いたのがなんと16歳!
どんな頭をしているのか。
それに彼はユダヤ系銀行家の家に育ち5カ国以上の言語を駆使し、画家になれるくらい絵も上手くて(私見ですが古今東西の作曲家で最も天才かと)凡人の私にはこの作品を理想通りに弾くのは…と考えこんでしまいます。
アパートで個人練習してあーでもないこーでもないと、仕方ないからシャワー浴びるかとすると今度は詰まりました。(練習でなく)シャワールームが!
借りてる部屋の風呂場はバスタブ無しでトイレとシャワーが同じ場所にあるタイプで天井に大きめのシャワーヘッドが付いている状態です。
1カ月分の髪の毛やホコリがたまり詰まってしまいました。
「ゲーッ。どうすれば良いの?水溜まりじゃん!」
待てど暮らせど水が流れません。
そういえば、2軒隣の1階が日用雑貨店だったような。
【これからは(勿論今までもそしてこの先も)本当にノンフィクションで過剰な表現や盛ったりしてません!】
店に入るとおばさんが「チャオ、ボンナセーラ。」と出てきました。ここからです。何と説明すれば良いのか、まず日本語でもアレの名前を知りません。
とりあえずその辺を物色します。きっとおばさん日本人がいきなり来て何か探してるけど盗みに来たんじゃないかしら、等と思ってたのかなー。
探しても見つかりません。こうなったら身振り手振りで説明です。手で丸を書いて棒きれを押し引くマネをしていると「ア、ハーン」と言って奥から持って来たのはフライパン?【あ~、こらゃもう吉本新喜劇や。】と、これからの展開を想像したら脱力感が…。
関西人ならオイシイんだろうけどそれどころではありません。
流石に言葉が無いと、そうだ水はアックアだから定冠詞付けて【なんでこんな時に文法をと思いながら】「ラックア、ラックア。」と言いながら先ほどのジェスチャーしてしばらく、おばさんバケツを手にして来ました。【なんでやねん?】もうこーなったら自分で探すしかないと感じて、店の中を探してるとおばさん気になるのか後をついてきます。なんとなく疑っているんでなく、何を言いたかったのかを知りたそうです。
4,5分するとありました!黒いゴム製の半円形で棒きれの付いたアレ。そうラバーカップ!
手に取って「クエスト、クエスト。(これ、これ)
」とおばさんに買いますアピールします。
そしたら「オカピート!(分かったわ)」と微笑んでくれました。

一件落着して、お金を支払って部屋に戻りすぐに試してみます。
これでダメなら大家さんに来てもらわないといけません。
その結果、流れました!
これで毎日シャワー出来る!
慣れない土地で当たり前な事が出来ることに感謝です。

数日後、シューマンのピアノ四重奏曲のレッスンがありました。
第3楽章はチェロのメロディから始まります。
そのメロディを弾き終わると、ブレンゴラ先生が「トモキ、クアジ、ミカド。」と言いながら手を柔らかく振りました。
そうです。日本人の私に分かりやすく故昭和天皇が一般参賀で見せる優しく手を振る表情の様に弾きなさい。と諭してくれたんです。クアジは~の様に。ミカドは平成になってましたが先代の皇帝、つまり天皇だったんです。
数少ない言葉でこんなに表現が分かりやすいなんて凄い!やはりヨーロッパ音楽の重鎮と言われる先生なんだ。と驚きと感心してもう一度やり始めます。
でも
逆にプレッシャーですよね。エレガントに演奏しなさいって。

あー、また難しくなってきた。
【次回へ続く】